挑戦し実践し創造する 生死を決める会社論★
年に一度の特別企画である今回は、『生きている会社、死んでいる会社』がテーマ。欧州を中心にアジアなど世界各国で活躍する経営戦略コンサルティング会社、ローランド・ベルガー日本法人会長の遠藤 功氏を講師にお迎えし、絶え間なく挑戦し、実践し、創造し、新陳代謝する『生きている会社』になるための組織論についてご講演いただき、厳しい競争社会を生き抜く指針と心構えを伝授していただきました。
トップだけが生きていれば良いのではなく、会社や組織全体が生きている必要がある、というお話で始まった遠藤氏の講演。業績の良し悪しだけで判断するのではなく、社員一人一人が未来に向かって何かに挑戦しているかが『生きている会社』の条件であり、たとえ業績が良くても決められた仕事を毎日同じように繰り返すだけでは、『死んでいる会社』と言わざるを得ない、半歩でも未来に進んでいける環境を現場のスタッフに与えることが重要だと述べられました。
経済状況が不安定で、未来の見えない現代社会で舵を取っていくには、まずゴールを定めることが大切です。予測に振り回されるのではなく、自分たちの会社をどうしたいのかというゴールをしっかりと決め、そこに向かって社員全員で挑戦することが新たな価値の創造へと繋がり、不要なものが淘汰され、『生きているサイクル』が成立するのだと言います。
その成功事例として、遠藤氏の著書にも登場する新幹線の車両清掃を行う会社、JR東日本テクノハートTESSEIが挙げられました。現場のスタッフが自社を清掃会社ではなく『おもてなしの会社』だと考え、全員でお客様の快適な旅のお手伝いをするという明確な目標に向かって進んでいるからこそ、スタッフが目を輝かせて仕事に取り組み、利益を上げる『生きている会社』になっているそうです。
会社も人間と同じで老化していきます。過去の業績に縋り安住し、傲慢でいることで老廃物が溜まり、意味・価値のない仕事を続けることで贅肉が付きます。これらを取り除くために大事なことは二つ。まず一つは『創造』。会社の目的を明確にし、新しい価値を生み出すこと。もう一つは『代謝』。過去の偉業に囚われず、事業・業務・組織などは要・不要を見極め思い切って捨てること。創造するためにはまず代謝が必要で、それにより生まれた時間・金・人を使って創造を行います。遠藤氏が『創造的新陳代謝』と呼んだこの循環こそが生きている会社になるために重要なのです。
その後、生きている会社の代表例として遠藤氏の著書にもたびたび登場する株式会社マザーハウスの代表取締役 山口 絵理子氏と弊社代表の岡山を交えたパネルディスカッションを行いました。
学生時代に訪れたバングラディシュで現地の人に言われた「援助が欲しいのではなく仕事が欲しい」という言葉から、自らの行うべき使命を見い出し、『途上国から世界に通用するブランドを創る』を理念に掲げてマザーハウスを設立された山口氏。すぐには手の届かない遠くを見据えたビジョンを設定したことが、会社を進化させるエネルギーとなり、また山口氏自身の仕事にのめり込む姿勢が社員の『共感』を産んだそうです。
また、人手不足に悩まされる小売業でありながら、マザーハウスで働きたいという若者が後を絶たない理由として、世界と関わりながらモノ作りが出来る・お客様と関わりながら世界を知ることが出来るといった『ここでしかできない仕事』があることを挙げられました。今後人手不足の加速が懸念される外食産業においても、業界や環境のせいにするのではなく、個々の会社の魅力を伸ばし伝えることが大切であるというお話は、皆さんの心に強く響いたようです。
参加者の皆さんからは「多くの実例でイメージしやすく、自社が生きているかを問い直す良い機会になった」、「山口氏の行動力・本気度に驚き、感動した」、「未来を作り上げる素晴らしい会社を目指そうと思った」など、嬉しいお声を数多くいただきました。
『平成』が終わり新たな時代を迎えた今、遠藤氏の語られた創造的新陳代謝に取り組み、明るい未来『令和』に向けて会社のあり方を見つめ直す貴重な時間でした。