激動の時代を生き抜く afterコロナ 食業界の展望
感染症拡大の影響により中止していた繁盛塾が、この度「食の未来繁盛塾」に名前を改め、1年ぶりに再開しました。今回のテーマは「afterコロナ 食業界の展望」。㈱キッチンエヌ 代表取締役 中村 新氏によるご講演とパネルディスカッションを通して、コロナ禍で見えた新しい課題、さらには食料危機問題に至るまで、食業界が一つとなって考えるべき課題について考えました。
コロナ禍を経て、消費者は商品に対して今まで以上に体験やサービスといった「付加価値」を求めるようになりました。そうしたニーズに応えるためのポイントとして、中村氏が挙げられたのは「日本人の満足の追求」です。最近では、野菜を使った料理だけでミシュランの星を獲得する店が出るなど、日本人の菜食への関心が強まっています。PBF(プラントベースフード)もその一つで、2~3年前まではかさ増しのために使われ、代替食という認識でしたが、今では健康やSGDsへの貢献といった付加価値が注目され、専門店が出来るほど成長しています。そこには日本人の根底にある侘び寂びといった精進の考え方が影響していると中村氏は語られました。環境問題に配慮した美味しく健康的な食事に、日本の食文化が合わさることで満足度が上がり、需要へと繋がります。ビーガンやベジタリアンのような海外の流行をそのまま取り入れるのではなく、タンパク質や乳製品と組み合わせるといった日本人に合わせた形態を模索し、定着させていくことが重要です。
また、中村氏が今年に入り飲食関係者18人へ行ったインタビューから見えてきたのは、人財教育の重要性でした。コロナ禍という緊急事態に陥ったことで、対応力のなさや、危機意識の甘さという欠点が露見した、と話す経営者が多くいたそうです。「価値買い」の時代に生き残るためにはサービスの強化しかないと中村氏は言います。日頃の失敗から得る経験や、倒産・閉店などの危機に対する訓練を実施することで、危機を共に乗り越える応用力が育ちます。商品も人財も、時代に合わせて高め続けていく努力が必要なのだと、強く感じるご講演でした。
第二部のパネルディスカッションでは、弊社代表の岡山を交え、食業界全体の現状と未来について議論しました。日本は食料自給率が先進国の中で最も低い37%にも関わらず、1人あたり1日約124gの食品ロスを出しています。これは賞味期限への過剰反応や、メーカーが利便追求に走りすぎて顧客のニーズに合わない商品を生んでしまっていることが原因だと中村氏は指摘されました。食資源の少ない国がこんなにも捨てているのだと、食業界に関わる我々はもちろん、消費者にも認識させる必要があります。
また、目前に迫る食糧危機問題については、ウクライナ侵攻や地下水の枯渇を例に挙げて解説。そんな危機的状況を少しでも回避するため当社では新たにアグリ(農業)事業に力を入れています。鹿児島県の自社農場にて、独自ブランド鶏「大摩桜」を肥育、2020年には大摩桜の堆肥を利用した循環型農業としてさつまいもやお茶の栽培を始めました。今後生き残るためには、未来を見据えた新たな産業の仕組みを創造し、時代や環境に合った商品の開発をすることが必要だと岡山は語りました。
参加者の皆さんからは、「これから起こり得る危機について考えさせられた」、「今後の日本の食について自社でできることを考えていきたい」などのお声をいただきました。大変な時こそ「大きく変わる」チャンス。明るい未来のため、食業界が抱える課題に力を合わせて立ち向かいましょう!