人に選ばれ、人が集まり、人が続く企業になるために 人材問題×レストランDXを学ぶ
今回は、飲食業界の大きな課題のひとつである「人材問題」がテーマ。日本中の飲食業に関わる先進的な取り組みを取材し、年間3000回のセミナーを監修・運営してこられた株式会社ケーススタディの代表取締役 荒井 静雄様にご登壇いただき、課題解決に繋がるヒントと考え方を学びました。
今、飲食業界でも導入が進み始めている「DX」とは「デジタルトランスフォーメーション」のこと。便利なツールや最新テクノロジーなど、デジタルの方に目が向きがちですが、大切なのは「トランスフォーム(変わる)」ことだと荒井氏は言います。売上促進も求人も、媒体や方法を論じるより、まずは「選ばれる理由」を店側がきちんと理解し整えることが重要です。改正労働基準法に適応できているか、キャリアとしての魅力があるかといった選ばれる理由があり、管理・コミュニケーションの仕組みといった人が続く環境が整って初めて、DX時代の求人方法を活用するのが、人材問題解決への手順です。成功事例としてご紹介くださった㈱SOME GET TOWNや洋食 春の取り組みから見えたのは、労務環境の整備がマーケティングの成功にも結び付いているということ。社員の休日を確保するために仕込みの手間がかかるメニューをやめ、店休日を増やす。残業時間を減らすために全スタッフがホールもキッチンもできるようにする。変わるためのこうした決断は難しいことですが、人がいないことには売上は生まれません。タイミーなど新たな求人ツールの登場で、募集から採用までの流れが大きく変わる中、求職者に選んでもらうためには、環境改善はマストと言えるでしょう。
また、店長をはじめとするリーダーの意識改革に有効な研修として、「人の気持ちをイメージする」ワークを体験。明日から1ヶ月、特殊な環境下に置かれる状況で「生活についての不安」と「職務についての不安」を3人1組で話し合っていただきました。自由時間はあるのか、服装はどうなるのか、希望の配属先に就けるのか、上司から怒られないかといった不安が挙がりましたが、このワークで想像した不安は、自店に明日から勤務してくれるスタッフが抱いている不安だと荒井氏は言います。リーダーは、スタッフの「時間と身体を拘束する力」「人事評価力」を知らないうちに手にしています。店長に必要なのは部下よりも優れていることではなく、力の使い方が分かっていること。力を持っていることを「自覚」し、スタッフに「敬意と配慮」を持って接することで信頼関係が生まれ、「人が続く環境」になっていきます。飲食店のリーダーの多くは、コミュニケーションやチーム力の向上について学んだことがない人ばかり。人が辞める原因となるコミュニケーションギャップの事例とワークから、自身の言動を改めるきっかけとなりました。
参加者の皆さんからは、「事例紹介が多く、導入してみたいツールや研修と出会えた」、「アルバイトとのコミュニケーションに活かしたい」など、絶賛のお声を多数いただきました。いま共に働いているスタッフもこれから出会う人たちも輝かせられる企業になるため、自店の課題と向き合い、勇気を持ってトランスフォームしてみる時かもしれません。