岡山フードサービス株式会社

無印良品に仕組みあり 人を成長させる企業の掟

年に一度の特別企画である今回は“仕組みづくり”がテーマ。㈱良品計画の代表取締役会長 松井 忠三氏に特別講師としてご登壇いただき、今や誰もが知る国民的ブランドである『無印良品』の知られざる業務改革と人材育成術について迫りました。パネルディスカッションでは、㈱キッチンエヌの中村氏と弊社代表岡山を交え、低迷していた時にトップに抜擢されてからV字回復に至るまでの大逆転劇の数々をお話いただだきました。

 衣料品・日用品・食料品など7000品目以上の商品を取り揃え、国内約400店舗、海外約300店舗と事業を大きく展開されている無印良品は1980年 株式会社 西友のプライベートブランドとして40品目でデビュー、その後1989年に株式会社良品計画としてブランド化されました。

 そんな無印良品にとって生涯語り継がれるであろう人物が、今回の特別講師の松井 忠三氏です。総務人事部長、事業部長としての実績を買われ2001年に社長に就任されましたが、それは良品計画が38億円もの赤字を抱えた苦境の年でした。この危機の最大の原因は今までの順風満帆な経営から「無印はこれでいいんだ」という社員の慢心や奢りに加え、その間も熱心に研究・開発を続けてきたライバル会社の勢いにあったと松井氏は語ります。また、時代を先取りしていたはずの商品コンセプトは創業から20年という時代の変化とともに、消費者の求める価値観からずれ始め、ブランドの弱体化に繋がったそうです。

 そこで松井氏は『進化と実行』をテーマに様々な角度から組織の徹底改革に取り組まれます。その中で生まれたのが2つの重要なマニュアルでした。 1つは本部の業務を記した『本部業務基準書』。もう1つは店舗での業務を記した『MUJIGRAM(ムジグラム)』という2000ページに及ぶマニュアルで無印良品の全てのノウハウが明文化されています。100人いれば100通りの仕事の進め方がある中、業務をマニュアル化することで全店の標準化、効率化、見える化を徹底したのです。

 現場の声を集約した仕組みづくりによって経営不振からわずか1年で増益に転じ、今年2015年には過去最高の純利益を更新するまでの復活を成し遂げられました。また離職率はわずか5%、「働きがいのある会社ランキング」では240社中14位に選ばれるなど、改革の成果が輝かしい数字として表れています。

 企業の仕組み作りという、1からの挑戦により不動の人気を獲得した無印良品。だからこそ、今もなお成長し続ける強い組織に進化できたのだと、松井氏の真摯な語り口から会場中の皆さんに伝わったのではないでしょうか。

 続いて第二部では松井氏に加え、数多くの企業のフードプロデューサーとしてご活躍されている株式会社 キッチンエヌ 代表取締役社長 中村 新氏、そして今回のコーディネーター役である弊社代表の岡山を交えパネルディスカッションを行いました。

 良品計画のカフェミール事業部が出店する『Meal MUJI』のメニューや、無印良品の物販用レトルトなどの商品開発に携わられている中村氏は自己紹介を兼ねて、新商品プレゼンの場で松井氏からなかなかOKの一言が出ず、苦労されたというエピソードを語ってくださいました。

 何度も何度も試作会を重ね、ようやく「これはいい!」と大絶賛されたのはシンプルなじゃがいものスープだったそう。これまでヒット作を次々と生み出してきた中村氏ですが、その経験から、「ただ美味しいだけではダメ。無印良品というブランドと商品が合わなければうまく売れない」ということに気が付いた、と語られました。

 今や誰もが知る国民的ブランド 無印良品。しかし今日に至るまでには、様々な試練や苦難の道があったことを、松井氏の体験談から学ばせていただき、3人の経営者、それぞれの熱が混ざり合った実り多きディスカッションとなりました。

 ご参加いただいた皆さんからは「分析力と行動力が素晴らしい」「ブランドに対する考え方に情熱を感じた」「仕組み化、見える化についてのお話を日頃の仕事に活かしたい」といったご感想をいただきました。
 
 今回は外食産業だけに留まらず、どの業界にも共通する課題である仕組みづくりについて、どのように築き上げ、リーダーとして牽引していくのか、その大きなヒントとなったのではないでしょうか。

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